【最新版】牛肉輸出の基礎知識|手続き・データ・輸出先国まで徹底解説

日本産牛肉の輸出は近年拡大を続けており、2025年には輸出額が過去最高を記録しました。一方で、牛肉輸出には動物検疫や輸出先国ごとの認定条件など、通常の食品輸出とは異なる手続きが必要になります。牛肉輸出を検討している事業者にとっては、輸出額や輸出先国の動向とあわせて、実務上どのような準備が必要になるかを把握しておくことが重要です。

本記事では、財務省の貿易統計をもとにした農林水産省や日本畜産物輸出促進協会のデータを用いて、牛肉輸出の基本知識、必要な手続き、最新の輸出実績、輸出先国・部位別の動向までを解説します。

牛肉輸出とは?基本知識と輸出できる牛肉の条件

牛肉輸出とは、日本国内で生産された牛肉を海外に販売する取り組みを指します。牛肉輸出には、通常の食品輸出とは異なり、動物検疫上の観点から輸出先国ごとに定められた条件を満たす必要があります。

輸出対象となる牛肉の定義(HSコード等)

貿易統計上、牛肉は「牛肉(くず肉を含む)」として分類され、冷蔵品と冷凍品に分けて集計されます。財務省「貿易統計」では、HSコード(貿易における商品分類のための国際的なコード)の0201(牛肉、生鮮又は冷蔵のもの)および0202(牛肉、冷凍したもの)に該当する品目が牛肉輸出の対象として扱われます。

輸出される牛肉には、和牛と呼ばれる特定の品種の牛肉のほか、それ以外の交雑種・乳用種の牛肉も含まれます。輸出統計上は部位別に、ロイン系(ヒレ・サーロインなど)、カタ・モモ系、バラ系という区分で集計されており、部位ごとに輸出量や単価が異なります。

輸出できる牛肉の条件(と畜場・施設認定など)

牛肉を輸出するためには、輸出先国が認定した と畜場(家畜を解体・加工する施設)および食肉加工施設で処理された牛肉であることが条件となります。輸出先国ごとに認定基準が異なり、認定を受けていない施設で処理された牛肉は輸出できません。また、輸出先国によっては、輸出できる牛肉の月齢や部位に制限が設けられている場合があります。牛肉輸出を新たに始める事業者は、対象国の認定施設リストや輸出条件を事前に確認する必要があります。

なお、日本産牛肉の輸出は、家畜の伝染性疾病の発生によって長期間にわたり制限を受けてきた経緯があります。牛海綿状脳症(BSE)の発生や口蹄疫の発生、東日本大震災に伴う原発事故後の輸入規制などにより、輸出が困難な時期が続きました。その後、2013年5月に国際獣疫事務局(OIE)から、BSEに関するリスク評価のうち最上位である「無視できるBSEリスク」の国として認定されたことを契機に、牛肉輸出は本格的に再開・拡大しています。現在の輸出拡大は、こうした認定の積み重ねの上に成り立っている点も理解しておく必要があります。

牛肉輸出に必要な手続きと輸出先国ごとの規制

牛肉輸出では、動物検疫、輸出先国の規制対応、通関手続きという3つの段階を経る必要があります。それぞれの段階で必要な手続きが異なるため、順を追って準備することが求められます。

動物検疫と輸出認定施設

牛肉輸出にあたっては、農林水産省の動物検疫所による検査を受け、輸出検疫証明書の発行を受ける必要があります。輸出検疫証明書は、輸出する牛肉が家畜の伝染性疾病に関する輸出先国の要求事項を満たしていることを証明する書類です。また、前述の輸出認定施設で処理された牛肉であることも必要条件となります。

輸出認定施設の一覧は農林水産省が公開しており、輸出を検討する事業者は、取引予定の と畜場・食肉加工施設が対象国向けの認定を受けているかどうかを事前に確認する必要があります。認定を受けていない施設の場合、認定取得までに一定の準備期間を要することもあるため、輸出計画の初期段階で確認しておくことが望まれます。

輸出先国ごとに異なる規制(米国・台湾・香港など)

牛肉輸出の規制は輸出先国ごとに異なります。例えば米国向けの輸出では、と畜場における取り扱い方法について、米国農務省食品安全検査局(FSIS)の基準を満たす必要があります。実際に、2020年1月から2月にかけて行われたFSISの査察では、認定施設の敷地内で家畜の鼻環にロープを通して引っ張る取り扱いについて、アニマルウェルフェア(動物福祉)に関する連邦規則に抵触するとの指摘を受けました。

この指摘を受け、農林水産省と厚生労働省は連携して対応を進め、輸出認定と畜場の担当者や生産者、自治体などの関係者を招集し、2021年に「輸出向け肉用牛取扱改善推進委員会」を設置しています。このように、輸出先国の規制は査察結果などをもとに変更されることがあり、輸出事業者は最新の規制内容を継続的に確認する必要があります。台湾や香港など輸出量の多い国・地域についても、それぞれ独自の検疫条件や部位制限が設けられているため、輸出先を選定する段階で条件を確認する必要があります

通関・書類手続きの流れ

牛肉輸出の通関手続きでは、輸出検疫証明書に加えて、原産地証明書やインボイス(商業送り状)などの書類が必要になります。輸出先国によっては、現地の輸入業者側でも輸入許可や検疫手続きが必要となる場合があり、輸出者と輸入者の双方で手続きの進行状況を共有しておくことが重要です。

また、輸出先国の言語での書類作成や、現地の検疫当局が指定する追加書類の提出を求められる場合もあるため、通関業者や現地の輸入パートナーと事前に必要書類のすり合わせを行っておくことが、手続きの遅延を防ぐうえで有効です。

日本の輸出品全体のランキングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

【最新データ】牛肉輸出額・輸出量の推移

牛肉輸出は、日本の農林水産物・食品輸出全体の伸びを支える品目の一つとなっています。ここでは最新の輸出実績と、政府が掲げる中長期の輸出目標を確認します。

2025年の牛肉輸出額・輸出量(過去最高)

農林水産省が2026年2月3日に発表した実績によると、2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円となり、前年比12.8%増で13年連続の過去最高を記録しました。品目別では牛肉、米、緑茶などが過去最高を記録しています。一般社団法人日本畜産物輸出促進協会が公表した「牛肉輸出をめぐる動向 2025年輸出実績」によると、2025年の牛肉輸出額は731億円と過去最高を記録しました。

同資料内で正肉について集計した数値では、2025年の輸出量は11,860トン(前年比117%)、輸出額は717億円(前年比113%)と、いずれも前年を上回っています。輸出量・輸出額ともに前年から大きく増加しており、輸出量の伸び率は輸出額の伸び率を上回っています。

政府が掲げる牛肉輸出の目標額

農林水産省は、農林水産物・食品の輸出額について、2025年までに2兆円、2030年までに5兆円という目標を掲げており、そのうち牛肉については2025年までに1,600億円、2030年までに3,600億円という目標額が設定されています。2025年の牛肉輸出額の実績(731億円)は、2025年までの目標額(1,600億円)と比較すると下回っている状況です。

一方で、輸出額・輸出量ともに前年から着実に増加しており、今後の輸出拡大に向けた取り組みが継続される見込みです。目標達成には、輸出先国の拡大や認定施設数の増加など、生産・流通の両面での対応が必要になると考えられます。

輸出先国・部位別にみる牛肉輸出の現状

牛肉輸出は、輸出先国や部位によって異なる特徴を持っています。ここでは輸出先国別の傾向と、部位別の輸出動向を確認します。

輸出先国別の傾向(輸出量1位・輸出額1位の違い)

日本畜産物輸出促進協会の資料によると、2025年の牛肉輸出について、地域別輸出量はアジア向けが7,936トンと最も多く、輸出量全体の67%を占めています。

次いで北米向けが2,557トンで、輸出量全体の22%となっています。国・地域別にみると、輸出量では台湾が最も多く、輸出額では米国が最も多いという結果になっており、輸出量と輸出額で1位となる国・地域が異なっている点が特徴です。これは、輸出先国ごとに輸出される部位や単価が異なることが要因の一つと考えられます。

部位別の輸出動向(ロイン系・カタモモ系・バラ系)

部位別の輸出量をみると、ロイン系が最も多く、次いでカタ・モモ系、バラ系という順になっています。近年は、カタ・モモ系やバラ系の輸出量が増加していることに伴い、ロイン系が輸出量全体に占める割合は低下する傾向にあります。また、牛肉輸出量のうち冷蔵品と冷凍品の割合は、それぞれおおむね50%前後で推移しており、大きな変化はみられません。

ただし、部位別にみると、ロイン系は冷蔵品の割合が半分以上を占める一方、その他の部位では冷凍品の割合が半分以上を占めるという違いがあります。

牛肉以外の食品輸出品目の動向については、こちらの記事でご確認ください。

まとめ

牛肉輸出は、2025年に輸出額731億円(正肉のみの集計では717億円)と過去最高を記録し、日本の農林水産物・食品輸出全体の拡大を支える品目の一つとなっています。輸出量ではアジア向けが最も多く、輸出額では米国向けが最も多いという特徴があり、輸出先国によって輸出される部位や単価も異なります。

牛肉を輸出するためには、輸出先国が認定したと畜場・食肉加工施設で処理された牛肉であることに加え、動物検疫や輸出先国ごとの規制に対応した手続きが必要です。政府は2030年までに牛肉輸出額3,600億円という目標を掲げており、今後も輸出拡大に向けた取り組みが進められる見込みです。牛肉輸出を新たに検討する事業者は、輸出先国ごとの認定条件や必要書類を事前に確認したうえで、準備を進めることが求められます。

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