2025年の確定実績において、中国の原油輸入総量は5億7,772万トンに達し、世界最大の原油輸入国となっています。現在の中国の原油輸入先に関する結論から述べると、最大の供給国はロシア(全体の約17%)であり、次いでサウジアラビア、イラク、マレーシア、アラブ首長国連邦(UAE)の順に構成されています。
かつては中東地域への依存度が極めて高い状態でしたが、近年の地政学的リスクの顕在化を受け、中国の調達構造は大きく変化しています。ロシアからの陸上パイプラインを利用した輸入の拡大や、制裁対象国からの非公式な迂回ルートの活用など、国家のエネルギー供給網を多角化する動きが顕著です。
本記事では、中国税関総署などが公表した最新データに基づき、2026年現在の中国における主要な原油輸入先のランキングと国別シェアの推移を解説します。
2026年最新版・中国の主要な原油輸入先ランキングとシェア

中国の原油輸入先は世界各地に分散されていますが、実態としては上位数カ国への依存度が高い構造となっています。最新の統計データに基づく輸入先ランキングと、中東地域への実質的な依存度について解説します。
2025年の原油輸入総量と上位10カ国のシェア

中国税関総署が発表した確定データによると、2025年における中国の原油輸入総量は5億7,772万トンに達しました。国別の輸入シェアを見ると、ロシアが全体の約17%を占めて最大の供給国となっており、これにサウジアラビア、イラク、マレーシアが続いています。
上位10カ国の構成から、中国の原油調達は特定の主要国と多様な補助的供給国の組み合わせによって成立していることが分かります。各国の主要な位置づけは以下の通りです。
1. 最大の単独供給国となった「ロシア」(17.0%)
国別のシェアで第1位となったのはロシアです。欧米の経済制裁を背景に、中国は割引価格で取引されるロシア産原油の輸入を大幅に拡大させました。また、海上輸送のリスクを伴わない陸上パイプライン(ESPO)経由での安定した供給網があることも、シェア拡大の大きな要因です。
2. 依然として極めて高い「中東依存度」(40.0%)
単独トップはロシアに譲ったものの、グラフの「オレンジ色」が示す通り、地域別に見ると依然として中東からの輸入が圧倒的な割合を占めています。第2位のサウジアラビア(14.0%)や第3位のイラク(10.0%)をはじめ、TOP10に入る中東5カ国だけで全体の40.0%に達しており、中国のエネルギー安全保障において中東地域がいかに絶対的な生命線であるかが分かります。
3. 第4位「マレーシア」(10.0%)が意味する迂回ルート
世界的な大産油国とは言えないマレーシアが第4位にランクインしている点には、特筆すべき背景があります。これは主に、経済制裁を受けている国(イランやベネズエラなど)の原油がマレーシア沖合でブレンドされ、原産地を偽装した「迂回ルート」として中国に輸入されているためです。中国の独立系製油所にとって、安価な原油を確保するための重要な裏口となっています。
4. 南米・アフリカ・中央アジアへの「多角化戦略」
第7位のブラジル(5.0%)、第8位のアンゴラ(4.0%)、第10位のカザフスタン等(2.0%)の存在は、中国が中東やロシアだけに依存しないよう、調達先の多角化(リスク分散)を推し進めている結果です。特にカザフスタンは、ロシアと同様に海上封鎖リスクを回避できる陸上パイプライン経由での輸入枠として機能しています。
中東地域への依存度とホルムズ海峡のリスク
国別の最大輸入先はロシアへ移行しましたが、地域別に見ると中国の中東依存度は依然として高い水準を維持しています。中国税関総署の2025年実績データによれば、中東6カ国(サウジアラビア、イラク、UAE、オマーン、クウェート、カタール)からの直接輸入量は2億4,452万トンであり、輸入総量全体の42%を占めています。
さらに、中国のエネルギー関連企業などの推計によれば、マレーシア等を経由して輸入されるイラン産原油などの迂回輸入分を加味した場合、ホルムズ海峡を経由する原油への実質的な依存度は56%に達します。この輸入構造は、中東情勢の緊迫化やホルムズ海峡の封鎖といった事態が、中国のエネルギー供給網に対して即座に物理的な供給不足を引き起こす主要因であることを示しています。
ホルムズ海峡封鎖の世界経済への波及については、以下の記事で詳しく解説しています。

ロシアからの陸上輸入を拡大している現在においても、海上輸送ルート、特に中東海域の安全保障が中国経済の稼働を左右する絶対的な条件となっています。
中国の主要な原油輸入先における各国の供給動向

中国の原油輸入先において、上位を占めるロシアと中東諸国、そして東南アジアを経由するルートは、それぞれ異なる背景と供給構造を持っています。各国の詳細な動向と、国際情勢の変化に伴う直近の輸入環境の変化を解説します。
最大の供給国であるロシアとESPOパイプライン
ロシアが中国に対する最大の原油供給国となった主な要因は、欧米の制裁下にあるロシア産原油を割引価格で調達できるという経済的合理性にあります。これに加え、東シベリア・太平洋石油パイプライン(ESPO)を利用した安定的な陸上輸送インフラの存在が、海上封鎖リスクを回避する上で極めて重要な役割を果たしています。
しかし、ESPOの輸送能力はすでに上限に達しつつあり、陸上ルートのみでの持続的な輸入拡大には物理的な制約が存在します。さらに、2025年7月に発効したEUの第18次対ロ制裁パッケージによってシャドーフリート(影の船隊)に対する規制が強化されたため、今後の海上輸送によるロシア産原油の買い付けには、輸送コストの上昇が見込まれています。
第2位のサウジアラビアおよびイラク・UAEの動向
長年最大の供給国であったサウジアラビアは現在第2位となっていますが、長期契約に基づく供給の安定性と原油品質の信頼性から、依然として中国の主力供給源として機能しています。中国の国営石油会社とサウジアラムコは製油所や石油化学分野での共同投資を拡大しており、単なる売買を超えた産業パートナーシップを構築しています。
また、OPECプラスが2026年に向けて増産路線へ転換する方針を示したことで、サウジアラビアを含む中東産原油の価格競争力が変化し、中国の輸入比率に影響を与える可能性があります。これに加え、イラクやUAEからの輸入も重要な基盤であり、特にイラクでは中国企業による油田開発への直接参画が進んでいるため、開発コストの低さが安定的な輸入量維持の論理的な根拠となっています。
マレーシアを経由した迂回輸入の構造
原油の生産量が比較的少ないマレーシアが輸入先ランキングの上位に入っている理由は、国際的な制裁対象国からの非公式な迂回輸入ルートとして機能しているためです。米国などの制裁下にあるイラン産やベネズエラ産などの原油が、マレーシア沖合の海域で他の原油とブレンドされ、原産地を偽装した状態で中国へ輸出されています。
この迂回輸入された原油は、コスト競争力を重視する中国国内の独立系製油所(通称「ティーポット」)に対して安価な原料を供給する重要な経路となっています。公式な税関統計上の数字と実質的な原産国との間に大きな乖離が生じている主要因であり、中国が制裁リスクを回避しながら安価な原油を確保するための実務的な手段として定着しています。
中国が原油の輸入先を多角化する背景とエネルギー安全保障戦略

中国が原油の輸入先を特定の地域に限定せず、多角的な分散を図る背景には、供給途絶リスクへの対応という明確な理由があります。物理的な輸送ルートの確保と金融面での防衛策を組み合わせたエネルギー安全保障戦略について解説します。
マラッカ海峡の回避と陸上パイプラインの拡充
中国が原油の輸送ルートを多角化する最大の理由は、「マラッカ・ジレンマ」と呼ばれる海上輸送の脆弱性を解消するためです。中東やアフリカから輸入される原油の大部分が通過するマラッカ海峡が有事によって封鎖された場合、国内のエネルギー供給が物理的に遮断されるリスクがあります。
この問題を回避するため、中国はミャンマーを経由するパイプラインや、ロシアおよび中央アジアからの陸上パイプライン網の整備を推進してきました。海上ルートに依存しない輸送インフラを構築することで、外部勢力による海上封鎖の影響を構造的に排除する措置をとっています。
12〜15億バレルに達する戦略的石油備蓄の構築
輸入ルートの多角化と並行して、中国は国内に膨大な戦略的石油備蓄を構築しています。国際エネルギー機関(IEA)やKplerなどの近年の推計によれば、中国の国家および商業石油備蓄の総量は12億から15億バレル規模に達しているとされています。
この備蓄量は、国際市場における原油価格の高騰時や、突発的な供給ショックが発生した際に、国内市場へ原油を放出して価格と供給を安定させるための物理的なバッファとして機能します。輸入依存度が高い中国にとって、一時的な輸入途絶に耐えうる実物資産を確保することは不可欠な戦略です。
人民元決済(ペトロ人民元)の導入拡大
原油調達におけるリスク管理は、物理的なルートの確保だけでなく、金融決済システムにおいても実行されています。中国は、ロシアやサウジアラビアなどの主要な産油国との原油取引において、米ドルを介さない人民元決済(ペトロ人民元)の導入を拡大しています。 これは、米国の金融制裁によって国際的なドル決済網(SWIFT等)から遮断された場合でも、エネルギーの輸入を継続できるようにするための防衛策です。
貿易赤字の抑制や為替変動リスクの低減という実利に加え、米ドルのシステムから独立した自律的なエネルギー調達網を構築する論理的なプロセスとして機能しています。
なお、人民元決済の実務的な仕組みや、企業が導入を検討する際の判断ポイントについては、以下のガイドで詳しく解説しています。

今後の中国における原油の輸入先の変化と国内エネルギー構造の転換

中国の原油の輸入先とそれに伴う総需要は、国内のエネルギー転換政策の進展によって、今後中長期的に大きく変化していくと予測されています。再生可能エネルギーと新エネルギー車(NEV)の普及状況に基づく今後の見通しを解説します。
中国のエネルギー構造転換を支える主要因
- 新エネルギー車(NEV)の普及拡大と運輸部門のガソリン需要の抑制
- 太陽光・風力など非化石電源インフラへの大規模投資による電力の自給・国内の石炭資源の維持と自国資源(権益原油含む)の開発継続
新エネルギー車(NEV)普及による石油需要の抑制
中国国内の原油需要の構造は、自動車市場の変化によって根本的な転換点を迎えています。2025年の実績において、中国の新車販売に占める新エネルギー車(NEV)の比率は50%前後に到達しており、内燃機関車からの移行が急速に進展しました。
このEV化の進展により、運輸部門におけるガソリンや軽油の需要はピークアウトしつつあります。自動車の動力源が輸入に依存する石油から国内生産可能な電力へ置き換わることで、将来的な原油輸入量の絶対的な増加を抑制する明確な因果関係が成立しています。
非化石電源比率の拡大と脱石油化の進展
電力分野においても、化石燃料への依存度を下げる脱石油化が進行しています。中国国家能源局の2025年実績データによれば、発電設備容量における非化石電源比率は約40%に達しており、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入量が飛躍的に増加しています。 発電における自国生産可能な電力へのシフトと、国内消費の多くを賄う石炭の存在により、エネルギー全体における輸入化石燃料の相対的な重要性は低下傾向にあります。
この構造転換は、国際情勢の悪化に伴う原油価格高騰が中国の実体経済へ与える影響を縮小させる論理的な根拠となっています。
自国資源の開発維持と権益原油の確保
輸入依存度を相対的に下げる一方で、中国国内の主要油田における増産維持や南シナ海などでの海洋資源開発も継続されています。国営石油会社による海外油田の権益買収(アップストリーム投資)も進んでおり、単なる市場からの買い付けではなく、自社がコントロール可能な「権益原油」の比率を高めることで供給の確実性を担保しています。
これらの施策により、中国は特定の産油国に対する過度な依存を減らしています。需要の抑制と供給網の自律化を並行して進めることで、外部環境の変化に左右されにくい多層的なネットワークへの進化が図られています。
まとめ
2025年における中国の原油輸入総量は5億7,772万トンとなり、その原油の輸入先はロシア(約17%)とサウジアラビアを筆頭に構成されています。中東地域への実質的な依存度はマレーシア等を経由した迂回輸入を含めるとホルムズ海峡経由で約56%に達するものの、海上ルートへの過度な依存から脱却すべく、陸上パイプラインの拡充や調達先の多角化が図られています。 また、外部リスクへの耐性を高めるため、12〜15億バレル規模の戦略的石油備蓄の確保や、人民元決済(ペトロ人民元)の導入といった物理的・金融的な安全保障戦略が実行されています。
今後は、新エネルギー車(NEV)の普及率が50%に達し、非化石電源比率が40%を超える国内のエネルギー構造転換により、中長期的な原油需要の増加と特定の輸入先への依存度は構造的に抑制されていくことが論理的に予測されます。


